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肝機能検査
⚪️肝実質細胞の検査として
分類 | 検査項目 | |
肝細胞の現在の障害・壊死をみるもの | GOT/GPT、LDH | |
肝細胞の機能(肝予備能)をみるもの | i.合成能の検査 | PT、Alb、ChE、コレステロール |
ii.解毒・排泄機能の検査 | ICG試験、アンモニア | |
慢性の炎症をみるもの | γグロブリン、ZTTなど。(肝に特異的な検査ではない) |
⚪️胆道系の検査として
分類 | 検査項目 |
黄疸や胆道閉塞をみるもの | ビリルビン、γGTP、ALP、LAP |
1.肝細胞、障害・壊死 の見方。
各組識の細胞が障害を受けて細胞膜の透過性が高まったり、細胞が死んで崩壊すると、細胞内の酵素が逸脱して血液中に出現。これを逸脱酵素と呼び、組織障害のマーカーとして用いる。肝疾患にはGOT/GTP、血液疾患(および組織障害一般)にはLDH、筋疾患にはCKが用いる。
▫️AST/ALTは肝機能検査の代名詞ともいえる逸脱酵素で、酵素の種類でいえばトランスアミナーゼである。
▫️AST/ALTを組み合わせて測ることにより、病態をさらに細かく判別することが可能になる。
1.ALTは ASTより肝特異性が高い 2.ALTは ASTより肝細胞から漏れやすく血中にとどまりやすい 3.通常はALT>AST。AST>ALTならば、以下の4つを考える ・急性肝炎の初期 ・慢性肝炎の患者なら、肝硬変への移行 ・アルコール性肝障害 ・肝臓以外からの酵素の逸脱>>筋肉、赤血球 |
□ALTは肝の細胞質内に存在しているので、軽度の肝障害で肝細胞膜の透過性が高まっただけでも血中に簡単に逸脱する。それに対し、ASTは主にミトコンドリア内に存在するので、より重い肝障害で逸脱する傾向がある。
□日常、よく見かける慢性肝炎や脂肪肝では、検査値はALT>ASTになるのが普通。ASTが正常でALTのみ上昇していたら、まず肝疾患(脂肪肝か非活動期の慢性肝炎)と考えて間違いない。
□逆にAST>ALTになるのは、下記の場合。
・急性肝炎の初期
肝細胞壊死が強い間は、細胞内の絶対量が多いASTが優位になる。しかし落ち着いてくると、半減期の長いALTが優位になる。
・肝硬変への移行
肝の荒廃が進むと肝細胞のALTが減少して相対的にASTが多くなる。慢性肝疾患でAST>ALTなら肝硬変への移行の可能性を考えなければならない。
・ALTが正常でASTのみ上昇している場合は、肝硬変やアルコール性肝障害を除けば、肝臓以外からの酵素の逸脱、つまり筋肉や赤血球からの逸脱が考えられる。
⚪️AST/ALTが正常なら肝臓は問題ない❔
たいていの場合はそう思って問題ない。しかし、肝硬変でも肝臓の炎症が比較的落ち着いていれば、AST/ALTが正常の場合もみられる。肝実質細胞が減ってしまっていると、肝細胞から逸脱してくる酵素の絶対量が減るので血中レベルもあまり上昇しない。肝臓が真に問題ないと判定するには、アルブミンなどの肝予備能検査・血小板数(肝のトロンボポエチン産生を反映)・肝のエコー像なども参考にしなければならない。
⚪️LDHの解釈
□GOT/GPTに次いで肝疾患でよく測定される逸脱酵素がLDH(乳酸脱水素酵素)。LDHは肝特異性はなく、あらゆる組識に万遍なく含まれる。LDHは、AST/ALTの補助的な役目を担っていて、単独での臨床的意味づけは薄く、AST/ALTの解釈を補足する。
□ASTに比べてLDHの上昇が目立つ場合は、肝実質障害以外の原因で逸脱酵素の上昇が起きている可能性が高いです。
□肝疾患でAST./ALTと共にLDHも著増しているときは肝細胞の壊死が強いと考えます。
□AST/ALTがあまり動いてないのにLDHとALPが著増していたら、肝に腫瘍が存在する可能性が高いです。
□肝臓以外では、LDHは血液疾患や悪性腫瘍(特に白血病、リンパ腫など)のマーカーとして利用されます。
分類 | 検査項目 | |
肝細胞の機能(肝予備能)をみるもの | i.合成能の検査 | PT、Alb、ChE、コレステロール |
ii.解毒・排泄機能の検査 | ICG試験、アンモニア |
肝予備能を見る項目は?
肝臓は人体に必要な物質の合成と有害物質の解毒の中心です。この機能は生存に欠かせないものなので相当な余裕がとってあります(肝の三分の二を切除しても生存し、数カ月で再生します。)肝臓の物質代謝能力の余裕のことを肝予備能と呼びます。肝硬変の人の生命予後は肝予備能との相関が高いです。
A.合成能の検査
プロトロンビン時間(PT)
□血液凝固に関与する蛋白は、もっぱら肝で合成され、半減期が数時間から2、3日と短いので、現在の肝機能の評価に最適です。特に劇症肝炎のモニターには欠かせありません。急性肝炎でPT50%以下は要注意であり、40%以下は劇症化を考えなければなりません。
□肝臓は重要度の高い凝固因子(PT)をAlb、ChEよりも優先して保とうとします。その結果、
・急性肝不全ではAlb、ChEはPTに先行して下がる
・劇症肝炎から回復するとき、まずPTが上昇し、遅れてAlb、ChEが上がる
・初期肝硬変ではPTよりもAlb、ChEのほうがよい指標となる
□あまり本にも載っていない知識ですが、扁平上皮癌(カルテにSCC;Squamous Cell Carcinomaと書かれる)の患者でアルブミンが低下している例が多いです。低栄養状態だけでは説明できないような気がします。何が言いたいのかというと、低アルブミン血症の患者では検査値として表示されるCa値を補正式で補正しないと、過小評価する恐れがあるということです。それから、高Ca血症に禁忌とされる薬剤にIVH基本液や、アシドーシス予防に併用される総合ビタミン剤(V.Dを含む)、意外なところではSM散などがあることに注意してください。以上、頭のどこかに入れておいてください。詳しくは高Ca血症の治療について取り上げたときに説明します。
アルブミン
□100%肝で合成される蛋白ですが、肝機能低下以外に、炎症による合成抑制、栄養不良、腎や消化管からの漏出(ネフローゼ、蛋白漏出性胃腸症)など、さまざまな原因で低下します。
□アルブミンは著しい肝機能低下ではじめて低下し、また、半減期が長い2~3週間)ので肝機能の変化の反映も遅いです。
□しかし、アルブミンは血漿の膠質浸透圧維持の主役であり、アルブミンの低下は肝硬変での浮腫や腹水の出現に直結し肝硬変の重症度判定に有用であり、肝予備能評価の基本的項目として用いられます。 4.0g/dLを切ってくると肝硬変を疑い、3.0g/dLを切ってくると浮腫や腹水がでてきます。
コリンエステラーゼ(ChE)
□アルブミンと動きはよく似ています。なお、アルブミンの上昇が臨床的に問題になることはありませんが、ChEの場合は肥満による脂肪肝やネフローゼで上昇するのが特徴です。
コレステロール
□肝はコレステロール合成の主役です。コレステロールが基準範囲を大きく下回る場合は、かなり重症の肝予備能低下があると考えます。なお、胆道閉塞があるとコレステロールが胆汁中に排泄されず蓄積するので上昇してきます。すなわち、コレステロールは胆道閉塞のマーカーでもあることに注意する必要があります。
B.解毒・排泄能の検査
ICG負荷試験
□緑色の色素、インドシアニングリーン(ICG)を静注すると急速に肝細胞に取り込まれ胆汁中へと排泄されます。血中ICG濃度の減少速度から肝機能を推測することができます。(静注後に経時的に採血する方法と指先に光源とセンサーを装着して血中濃度を測定する方法があるようです。)
□肝癌切除術前の肝予備能検査として使われます。
□肝予備能評価法として高く評価されているが、黄疸(T.Bil 3.0mg/dL以上)の人ではビリルビンと排泄が競合するため、正しく評価できません。
アンモニア
□肝はアンモニアを尿素に変えて解毒できる唯一の臓器です。肝不全では主にアンモニアの蓄積により、振戦・昏迷などの中枢神経症状(肝性脳症)があらわれてきます。
□アンモニアの血中濃度は、肝機能以外に、食事からの蛋白の摂取量やその質、腸管内の細菌の繁殖状態にも大きく左右されます(逆にいえば治療の余地がある)。したがって、肝予備能の検査というよりは、肝性脳症の治療のマーカーとして用いるのが通常です。
分類 | 検査項目 | |
慢性の炎症をみるもの | γグロブリン、ZTTなど。(肝に特異的な検査ではない) |
慢性炎症マーカーとは?
□AST/ALTは現時点の肝細胞の障害をあらわしているのに過ぎず、それがどのくらい続いているのか、炎症性のものなのか、炎症の程度はどうか、といったことはわかりません。
□そこで、慢性炎症のマーカーが肝機能検査の中に取り入れられているわけです。慢性肝炎の炎症の程度は、基本的にγグロブリンが多いかどうかを目安にします(CRPは肝炎の評価には使えない!)。
□具体的には、蛋白分画検査でγグロブリンが増加してないか、または、A/G比が低下してないかをチェックすればよいのです。他にγグロブリンの変化を間接的に見る検査としてZTT(クンケル)、TTT(チモール)などの膠質反応がありますが、これらは生化学検査が未発達の時代の遺物で、使用されなくなる傾向にあります
慢性炎症マーカーはどんなときに役に立つのか?
慢性肝炎の炎症の程度の評価
□慢性肝炎の炎症が強いほど、また長期に持続しているほど、γグロブリンの上昇が著しいです。
□肝硬変の多くは慢性肝炎の終末像と考えてよく、慢性肝疾患では、γグロブリンが上昇しているほど肝硬変への移行(現在および将来)の確率が大とみなすことができます。
脂肪肝と慢性肝炎の鑑別の補助
□脂肪肝はAST/ALTの軽度の上昇もよく伴うので慢性肝炎と紛らわしいです。しかし、過栄養性の脂肪肝のみでは慢性炎症マーカーが上昇することはありません。
□非活動性の慢性肝炎ではγグロブリンが基準範囲のことも多いので、慢性炎症マーカーが陰性だから慢性肝炎ではないとはいえません。
□なお、慢性炎症マーカーが異常だからといって、肝疾患と短絡してはなりません。ガンマグロブリンは、高齢者では高めであり、慢性炎症(特に慢性関節リウマチなどの膠原病)や多発性骨髄腫においても著増します。
作成日 2009年9月12日
メイロン
腎性のアシドーシス、呼吸代償がある方。どんな時にメイロンって補正するのだろうと思い調べてみました。
⚪️メイロンの適応疾患
・代謝性アシドーシス、特にアニオンギャップが正常の場合
・高カリウム血症
※代謝性アシドーシスが起こった場合、通常は腎臓からの酸の排泄が亢進してPHの正常化は達成されるので、 PH〈7.2の重篤なアシデミアでない限りは必要なし。
二つは賛否両論あり、以下を目安に補正。
・乳酸アシドーシスPH〈7.10〜7.15
=
・ケトアシドーシス PH〈7.00
=
PH正常化を目標とするのではなく、PH7.2を目標として補正する。
⚫︎実際の重症患者対応の場合にはアシドーシスの原因に対する治療を行うことが重要。
⚪️禁忌
・メイロンを投与すると、Na+とHCO3-に分離し、体内にある水素イオン(H+)と結合して重炭酸緩衝系を左にシフトする。
・メイロン投与によって増加する二酸化炭素(CO2)を肺から吐き出すことが、できない場合(呼吸性アシドーシスの患者など) 禁忌。
⚪️注意
メイロンはNaと結合することで形を安定化させているので、投与した場合はナトリウム負荷となる。
ナトリウム負荷と重炭酸というアルカリ負荷が同時にかかるため以下を注意。
①ナトリウム負荷による心不全、高ナトリウム血症
②高浸透圧になることによる血管内水分貯留、浮腫、心不全
③アルカレミアに伴うナトリウム以外の電解質異常
・低カルシウム血症(アルブミン結合カルシウムが増加するためイオン化カルシウムは減少)
④細胞内アシドーシス
・心筋の収縮力低下、肝細胞での乳酸代謝の低下につながる
⑤リバウドアルカローシス
※メイロンの組成がちがうので、注意!
チェーンストークス呼吸
前に低酸素脳症の方でこの呼吸をしていた方がおりました。
⚪️チェーンストークス呼吸
数の少ない浅い呼吸からしだいに数の多い深い呼吸になり、再び浅くなり無呼吸に移行する呼吸である。
⚪️メカニズム
呼吸中枢機能の低下や器質的障害によって、呼吸の周期性が失われることによって出現。 無呼吸中に、動脈血のpo2低下とpco2上昇が生じ、これらを感知した化学受容器からの刺激
によって呼吸が出現する。 呼吸によってpo2・PCO2が回復すると、化学受容器からの刺激が消失するため再び無呼吸となり、繰り返す。
⚪️こんな疾患に出現!
両側大脳半球や間脳の障害、脳出血、髄膜の炎症、心不全の末期、肺炎、アルコール依存症、睡眠薬中毒や尿毒症などにみられる。
QT
上行置換➕CABG後の人でVT.VFが出た人がいました。 QTC550と伸びていたので、調べました。
⚪️QT時間・延長
・QT時間→心電図のQ波からT波の終了時間のこと。 心室の充電(再分極)時間のこと。
・ QT延長→心筋活動電位の延長により、QT間隔が延長するもの。
⚪️QT時間が延長すると何がいけないの?
QT時間か延長するということは充電時間が伸びている状態で、心室の心筋が不穏な状態に陥っていることを意味する。この時間が延長すると充電過程に影響し撃発活動という特有の現象が生まれ、心室頻拍を招く。他形成心室頻拍(トルサード・ポアンツtdp)という心室細動に移行しやすい危険な不整脈となることがある。
⚪️QTC
QT時間を計測する場合、心拍数の程度によって変化するもので、心拍変動の因子を除く補正が行われる。
平方根(bazett式)を使って評価する。正常値 QTC〈0.44
⚪️QT延長症候群
QT時間が0.45秒(11mm以上)延長した場合
・先天性 (遺伝など、、。)
・後天性↓
⚪️治療
・先天性(遺伝性)
βブロッカー、一時ペーシング(徐脈が高度の場合)
・二次性(後天性)
薬剤性なら原因薬剤の中止
高度な徐脈があれば、一時ペーシング、イソプロテレノール点滴
低K血症があればK補正。
挿管について
挿管の手順についてopeナースに教えてもらえたので勉強。
⚪️手順
・バックバルブマスクを準備。(心肺蘇生の場合にはリザーバーマスクを介した酸素投与が必要になる。)
・喉頭鏡ブレードとハンドル(成人は3号が基本、4号は大きめ)明るさ、電球の緩み、ネジの緩み、降ってみる。
・挿管チューブ(カフの確認。10cc+10cc-20cc)(スタイレットは湾曲に先端が飛び出さないように、キシロカインゼリーを塗布。)
・吸引準備(気管内分泌物除去、突然の嘔吐による誤嚥予防)
挿管の薬剤
1.フェンタニル(プロポの血管痛をとる)
2.プロポフォール
3.マスキュラ の順。
⚪️手順
ポイント
・手際よく、医師に的確にわかりやすく渡す。
・喉頭鏡を抜く際、チューブの深さを維持、慎重に介助。
①Dr.が気道確保、用手的加圧換気をしてる間、挿管の準備、換気が適切に行われているか観察。吸引準備。spo2、心電図、血圧。舌根沈下や唾液による気道閉塞ないか、胸部が膨らんでいるか。
②スニッフィングボジションをとる。(匂いを嗅ぐような姿勢)
③Dr.は喉頭鏡を挿入するため、喉頭鏡のライト確認、ブレードの先端が患者の口に入る方向にしてDr.の左手に渡す。 (口唇裂傷を防ぐため、ブレードに巻き込まれてないか、歯牙損傷を避けるため特に上の歯がテコの支点になってないか)
刺激でBP上昇しやすい!!
④Dr.にチューブを渡す。 カフがDr.の視野に入るようにチューブの挿入方向に沿った向きで上の部分を持って渡す。喉頭展開しチューブを挿入する際右口角を開くように介助。視野が広がりDr.が声門を確認しやすくなる。
⑤Dr.は気管チューブの挿入を確認して喉頭鏡を抜くので、医師の指示でスタイレットを抜く。喉頭鏡と同時にチューブが抜けないようにチューブを押さえる。
成人男性22ー24センチ
成人女性20-22センチ
⑥Dr.はチューブ固定。バルンにカフを入れる。注入量はバックが加圧しても呼吸ガスが漏れない6ー8cc程度。
⑦呼吸音聴取
1.胃に空気が入ってないか 、心窩部がボコボコしないか。
2.左右差、胸郭の動き
3.最後に1をもう一度。
※食道挿管の特徴
・用手的加圧換気の時バックが重い。
・呼気の返りが悪い。
・吸気時、胃が膨らんでいる。
・バックバルブを押した時、心窩部にボコボコと音がする。
・呼吸音聴取なし
・spo2が下がる